6/20 ☀︎ 🇰🇷にて
今日は日本も束の間梅雨を忘れる1日だというふうに聞いている。
そんな穏やかな日に水を差すようで申し訳ないが、今日の記事は見る人によっては不快になる内容かもしれない。マイルドに説明すると、食べものを放置するような話だ。
記録として残しておきたいだけなので、合わないかもと思われた方は速やかにブラウザバックしていただきたい。
私の部屋の冷蔵庫は壊れている。
コンセントを挿しても、古びた匂いのする庫内に温風が吹き荒れるだけである。
冷蔵庫はさも満足そうに、しばらく仕事をすると一息ついてみせるが、もちろんうっすらでさえ冷えたなんてことはなく、ただ完璧に生温い庫内が生成されたにすぎない。
大家さんに2回ほど話してはみたのだが、2回目に時間を設定しなかったせいで様子を見てもらえず、手を煩わせ続けるのも申し訳ないので本当に冷蔵庫が必要になったらでいいかと思って諦めた(!)。
加えて、この部屋に調理器具はない。
前の住人は意味わからんモビールとかインディアンふうの首飾りとかは置いていったくせに、調理器具はひとつ残らず持っていってしまったのである(当たり前か)。
唯一日本から持ってきていたレンジでお米が炊ける「ちびくろちゃん」も、電子レンジさえないのでまったく使い道がない。湯も沸かせない。
この国の、生活のもっとも基盤を支えているであろうAmazon的立ち位置のアプリや(驚くなかれ、韓国にはAmazonがない)、わたしの愛用しているデリバリーアプリなどの仕組みは独特で、なぜか韓国国内で発行されたクレジットカードしか決済に使えないというパターンがままある。
調理器具を購入することさえできない私は出前を頼むしかない。
しかし、前の日記にも記載した通り、この国では牛肉などを注文しなければ1人前の価格設定は大体500〜700円程度に収まる。
配達可能料金には下限が設定されていて、店にもよるが大体10,000〜15,000원(日本円で900〜1400円程度)である。
つまり、一人暮らしで出前を頼めば必ず余るのは既に分かりきったことなのだ。
前述の通り冷蔵庫をもたない私に残された選択肢は「できるだけ涼しく乾燥した場所に置いて、無事を願うこと」のみであった。
ひとつだけ幸運だったのは、ソウルが思いの外涼しく、かつ冬寒い地域あるある、窓の性能がかなり良いことである。
現在の気温では昼ごろまで窓を開けたまま過ごせるし、暑い時間帯でも3枚もある窓をしっかり閉めておけば冷房の必要はない。
夜ねむる前に窓を閉めても、朝まで寝苦しく感じることもないのである。
この気温が幸いして、今までマンドゥ(餃子みたいなもの)とかトッポッキとスンデとか、ジャジャン麺とポックンパッ(炒飯的なもの)とか色々なものを翌日まで繰り越してきたが、特に大変なことになっていた記憶はない。
スンデが乾燥して少し固くなっていたのは悲しかったが、ポックンパッはむしろ前日よりパラパラしてよかったかもしれない(皿にラップで届いたのでラップをかけ直して保存できたのもある)。
しかし、今回は違っていた。
昨日、出前で食べてみたかったコングクス(豆乳をそのままスープにした冷たい麺)を頼み、価格を合わせるためにジャジャン麺とチャンポン(海鮮入りで具沢山の麺類という点は日本と同じだ)のハーフ&ハーフを頼んで、迷ったあげくコングクスを食べ、もう一方は置いておくことにした。
そして今日の朝兼昼兼夕ごはんとして先ほど意を決して食べたのだが。
まず、ジャジャン麺は以前の実験結果通り、別の店のものではあれど同じ結果で、ほとんど痛みを感じることなくおいしく食べられた。
当然麺は固まっているのだが、私はだてに小麦粉の塊愛好クラブ会長を務めていないので、そのまま箸でむんずと掴みモギュモギュと食べることにはなんの抵抗感もない。
ちなみに、日本のジャージャー麺と韓国のそれはまったく味が違うと言われている。
日本で食べたことがないので韓国の味に関して述懐することしかできないが、ここでは上の黒色のソースはかなりドミグラスソースに近い深みがあり、かつうっすらと味噌を遠くの方に感じるのでもちろん炭水化物に合う。
具としては小さめに切られた玉葱と、同じような大きさの牛肉らしき肉塊、あと今日食べたものにはひとつだけうずらの玉子が入れられていた。
『パラサイト』をきっかけに日本でも知られるようになった「チャパゲティ」は、根本の味自体は遠いとは感じないが、やはりインスタントらしいジャンク味、それと甘みが大幅に上乗せされているように感じる。
で、問題はチャンポンである。
最初にこれまた具になっていた玉葱を口に入れた時、酸味を感じて「あ、来たな」と思った。
一晩スープにさらされた麺が放置したタピオカのように弾力を失うことは想定内だったが、にしてもやはり麺もうすら酸っぱいのである。
どう考えても発酵が進んでいるのだ(ちょっと良い風に書いた)。
その理由は具を見ると分かった。
玉葱、もやし、完全に形はムール貝なのに中身は牡蠣みたいな色合いの新種の貝類、あとはイカも入っていただろうか、その中に混じってどうやらキムチが入っていたようなのである。
元々本場のキムチは日本で食べるものよりかなり酸味が強く、辛みと酸味が接戦を繰り広げ下手すると後者に軍配が上がってしまうほどがっちり漬け込まれているのだが、恐らくその菌たちが加熱にさえ打ち勝ち、チャンポン全体を健気に乳酸発酵させていたのである。
なんか思い浮かべただけで咎める気持ちになれなくなったので、そのまま思い切って完食した。スープを飲むのだけはやめておいたが。
(※編集部注 本記事の筆者は幼い頃から「食べられるものはすべて食べる」英才教育を受けており、また屈強な胃腸を持ち合わせる専門家です。絶対に真似をしないでください。)
なんか腸で菌たちが手を取り合って踊っているような気がする。
(※編集部注 個人の感想です。)
さすがに反省したし、まあ韓国の食べ物ですぐ食べてみたかったものは一通り消化したし、そもそも私は何も考えずにいるとよくもこう炭水化物ばかり食べるものだ。
明日からは常温で保存できるものという観点を大切に、パン屋でパンの詰め合わせとサラダを頼み続けて残り一週間乗り切っていこうと思う。
最後に関係ないが今日の発見を書いておく。
日中に「自宅待機者の安全保護」アプリをインストールしたスマホを長時間放置しておくと、嫌めなアラーム音が慣らされることを発見した。
私に関してはただただ昼過ぎまで惰眠を貪っていただけなので、アラームで起こされて勘弁してくれよという気持ちだったが、GPS判定を移動させないため家にスマホを放置したまま外出するアホのための機能なのだろう。
にしても、スマホの起動状況までアプリで分かるもんなのか。このアプリにどれだけの情報が許可されているのか考えると少し怖い。