私は生理が嫌いだ 韓国にて

これから書く文章はきっと読んでいて心地の良いものではないと思う。

書こうと決意した昨夜に比べればまだ気持ちは落ち着いていて、ただ呪詛を唱えるだけの日記になることは免れそうだが、いずれにしろ、合わないと感じたらどうかタブをそっと閉じていただけるとありがたい。

また、私には他人の生理を体験することはできないし、その筋の専門家でもない。

 

後述するが、私は根本的に自らの女性性を呪っているので、そのような表現が止むを得ず出てくる場合がある。

しかし、この文脈における女性とは、セックス、ジェンダーとしての「女性性」という概念であり、またこれは私の身体と心の不調和に由来するものであって、実際の女性たちになんら関わるものではないという点について必ずご了承いただきたい。

多くの女性は、もちろん生理が好きな人はいなかろうが、皆立派にその気持ちと折り合いをつけて生きている。

その姿勢を深く尊敬してやまない。

 

 

「生理が辛い」と聞いて想起されるのは専ら生理痛ではないかと思う。身体に最も露骨な不調が来される、分かりやすい症状だ。

しかし、生理痛が酷くないからといって生理が軽いと判断するのは間違っている。

私が思うに、辛さというのは大きく分けて4つある。

もちろんその全てと戦っている方もいらっしゃるし、どれも重くないよ、という方だっていらっしゃるだろう。当たり前だが、人が違えば生理のあり方も違うし、その辛さのあり方だって違ってくる。

 

①生理痛

「お腹に重しが乗っているような痛み」。個人的な感覚としては単なる腹痛にも近いが、いかにもトイレに行ったら治りそうなのに、治らないので辛い。

重い方だと、べッドから起き上がれないはデフォルト、痛みで失神する、病院に運ばれるという話も度々耳にする。

生理のたびに飲む程度ならば痛み止めの副作用は出ないらしいのだが、これが日頃から頭痛持ちの方だったりすれば事情はまた変わってくる。

 

月経前症候群(PMS)

生理が近づくと、ホルモンバランスの乱れが脳神経にも影響を及ぼし、なんとなく気が滅入ったり怒りっぽくなったりすることがある。

周囲には自分も含め、過食の症状が出る人もかなり多いように感じている。

精神神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがあります。

公益社団法人 日本産婦人科学会HPより

http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13

 

③経血が多い

保健体育の授業では、経血の量はスプーン一杯だと教えられた。

一週間かかって大さじ一杯くらいなら許せると当時は自分を宥めたものだが、実情は、「子宮から流れ出す血液の量が、一回につきスプーン一杯」というのが正しい(個人差があり、私は経血過多です)。

生理の間は絶え間なく血が流れているのではなく(そうだとしたらとっくに死んでいる)、不定期にまとまった量の、粘りのある血がどろりと滴りおちてくるのだ。

勿論その間隔は一時間とかではなく、数分とか数十秒である。

この不快さを文章にできる才がないのが悔しい。とにかく、今血の塊がどこを伝っているかということが、どろどろとした感触が、勉強していても、働いていても、友達と話していても、いかなる時も強引に意識の中に割り込んでくる。

 

排出する側はお気楽で羨ましい限りだが、受け止める側には限界がある。

つまり、経血が多いと漏れるのだ。

生理中は数時間おきにナプキンを交換しなければいけないが、そこまでしても漏れる時は漏れている。

ベッドに、スカートに、ズボンに、椅子に、血がついていることの途轍もない不快感。それを洗うときの悲しみといったらない。

 

ちなみに思い出したので言っておくと、経血が多い方で渡韓と生理が被る方は、絶対に何としてでも日本から必要分の生理用品を持って来られたし。

韓国の生理用品は高く、おまけに全体的に吸収力が弱めのように感じられる。

寝たら終わる。

 

④自らが女性であることを再認識させられる

女性の身体をもって生まれたことに懐疑的である者にも、生理は否応なしに訪れる。

抵抗することもできず、ただ血の流れ出すがままに任せるしかないのはあまりに屈辱的な体験であり、耐えがたい。

初潮を迎えると赤飯を出すという風習があるが、本当に不快で仕方がなかった。なにも祝われることなどなく、ただ呪いのはじまりに過ぎなかったのだから。

 

 

見ていただいた通り、私の生理の辛さというのはほぼ③と④に集約されている。

経血が多いというのは大きな声では言いづらい辛さだろうが、見えないところで生活にとても大きな支障を来すのだ。

起きている間はまだいいが、夜眠っている間に目覚ましをかけてまでナプキンを換えにいくことなんてできない(したくもない)し、朝起きたら当然シーツには血の染みがついている。

もう耐えきれなくて、家ではずっとこれを履いている。

 

 

というか、白状すると昼間でも「無理」という気持ちになった時はこれを履いて過ごしている。

もうおむつばりの吸収パッドがお腹から背中まで全力でカバーしてくれており、形も完全にパンツ状になっているので、横から漏れるということも吸収しきれず溢れてくることもほとんどない。

これで自分の生理について安心しきってしまった私は、韓国に来てこれでいけるだろうと33cmのナプキンを買い、もれなくシーツに染みをつけることになるわけだが…………

 

 

上では大きな辛さに限って紹介したが、小さいものを挙げていくときりがない。

 

・血生臭い

ーただでさえ血の鉄臭い匂いがするのに、寝て起きた時にはもう血生臭いとしか言い得ない独特の臭気が漂う。ウォシュレットで消し去っても、鉄臭さはいつまでも残る。

 

・トイレや風呂が血塗れになる

ー地味にHPを削られる。おまけに、ふんわりと鉄の香りが立ち昇る。

 

・血がついたものを洗うのが嫌

ーシンプルに嫌。エコな洗って使える生理用パンツも日本に入ってきつつあるが、押し洗いするたびに染み出す血とこびりつく鉄臭さのことを考えるとどうしても気が滅入る。

 

・タンポンや生理カップを挿れるのも嫌

ーこれは人にもよるだろうが、体内に異物を挿れたまま生活することは私にはできない。だって、ミスったら取れなくなって産婦人科行きだ。あと、これらはいずれにしろナプキンとの併用が推奨されている。

 

・気が散る

ー血が流れるとどうしても意識の前面に「今血が流れたな」が表示される。

 

・月経周期というが、周期を作ることは難しい

ー健康的な生活を送るか、ピルを服用していれば生理は周期的に訪れるが、そうでない場合はいくらでも周期はめちゃくちゃになる。生理が嫌過ぎて、ピルを飲む前はとことん不健康だったので3ヶ月くらいは平気で来なかったりした。

 

・生理が来ないと心は嬉しくても身体がダメになっている

ー不健康な生活の表れなのでね

 

・貧血になる

ーそんな大量の血が毎月体から流出してるのだから、そりゃ貧血になるのも当たり前だ。一昨日、なんか立ち上がるたびに立ちくらみがして変だなと思っていたら生理の奴の仕業だった。

 

・というかそもそも、排卵し続けることにはリスクがあるらしい

ー昔より排卵や月経回数が増加し子宮にかかる負担も増加した結果、結果子宮内膜症卵巣がんが増えている(らしい)。

doors.nikkei.com

 

・でもピルにもリスクがある

ーピルを服用することで月経周期やホルモンバランスが整えられ、PMSや生理痛も軽くなると言われている。服用中は排卵が行われず、生理だけが起こる。しかし、卵巣の負担は軽くなる一方、副作用としては不正出血や血栓ができやすくなることなどが挙げられており、海外には副作用の重篤化により製薬会社が訴えられた裁判なんかもあった気がする。

 

・ピルも生理用品もタダじゃない

ーピルを50年間飲み続け、生理用品を50×12×7=4,200個買うとしたら、いったい金銭的負担はどれほどになるのだろうか。考えただけでくらくらする。生きているだけでお金がなくなっていく。

 

 

小学校の保健体育の授業で初めて生理の存在を知らされた時、私は絶望し、泣き、どうにかして子宮を取り除けないものかと母親に懇願し、女に生まれた我と我が身を呪った。

こちらはただ生きているだけなのに、なぜ理不尽に股から血を流さねばならないのか。

ひと月に一度と言えば聞こえはいいが、一度といったって一週間だし、自分の母親のことを鑑みると、恐らくこれを4、50年、つまり480〜600回も繰り返しながら生き続けねばならない。

誤解を恐れずに言えば、今でも時々、これは何かの罪なのではないかとさえ思う。平安時代に生理が穢れとされたことも、分かる。

 

別に誰かに労ってほしくてこれを書いたわけではない。

あなたのパートナーや友人にはその人なりに何かしてほしいことがあるかもしれないが、少なくとも私は特に誰にも、何かしてもらいたいとはまったく思わない。

ただ、あなたと同じように考え、同じように行動できる人間であるにもかかわらず、生理があること、生理が重いことによって肉体的あるいは精神的に苦痛を感じ、時間やお金や機会を損失している女性たちがいることを知ってほしいのだ。

たとえばピルや生理用品がもっと買いやすくなるような税制が整えられたり、婦人科がもっと受診しやすくなったり、身体に害なく生理が止められる技術が生み出されたりしたらどれだけ救われる人がいるだろうか。

そしてまた、あなたが抱えている私の知らない苦しみも、教えてほしい。